ミニイク建築

建築を、文化を、見に行く人を応援するサイトです

名産石州瓦に包まれた赤の美術館、島根県芸術文化センターグラントワ

ひたすらに赤、赤、赤の石州瓦に包まれた空間が唯一無二の印象をつくっている島根県芸術文化センターグラントワ

石州瓦とは、グラントワが立地する島根県石見地方で生産されている粘土瓦です。

この地域に建てられた伝統的な木造建築の屋根瓦に多く使われており、グラントワを目指して移動する車中ではそこここに石州瓦に覆われた住宅が建ち並ぶ風景が楽しめます。

特に石見近辺の日本海側のエリアは、海岸沿いの町並みを見下ろすように主要道路や線路が設けられていることもあり、屋根のみが石州瓦のはずなのに一面この瓦が広がっているような印象を受けます。

設計者である内藤廣さんは、そのイメージをこの巨大な文化複合施設にもちこもうと考えたのではないか。

通常は屋根面に使う瓦を大面積の壁面にも使用し、外観の全体を瓦で覆った異様な外観を見ると、そのようなことを考えてしまいます。

またこの石州瓦、石見名産とはいえ、山口県島根県の山あいから海岸沿いまでかなり幅広い範囲で屋根に使われており、地元の建築家が設計したのであればここまで大胆な使い方はしなかっただろうなという気もします。

ある種、外部からの視点でこの瓦を見たときに導き出された効果的な使い方だったのでしょう。

内藤廣さんはグラントワだけでなく、全国各地でその土地の文脈を読み込み、設計に昇華した旅の目的地になるデスティネーション建築を数多く手掛けていますので、見比べてみるのもおすすめです。

グラントワの空間で特に注目したいのがエントランスから入ってホワイエを抜け、中庭へ出るシークエンス。

素材と光の巧みなコントロールにより、中庭へ出た瞬間「赤に包まれる」ここにしかない体験が出迎えてくれます。

赤瓦屋根の家が建ち並ぶ海沿いの集落

近隣に建つ益田市立市民学習センター。近代以降の建築にも石州瓦が用いられている

アプローチ空間。前面道路側は比較的高さを抑えたボリューム

エントランスホール。受付などの機能がないがらんどうの空間

中庭。床にも赤のタイルが敷かれ、赤一色の空間が広がる

廊下から中庭を見たところ。光のコントロールが巧みだ

ホールホワイエ。公演がない日は中二階のスペースで読書などもできる

ホワイエ振り返り

美術館エントランス

中庭

カフェ

外壁の一部。瓦の種類や貼り方もさまざまなパターンが展開されている

 

島根県芸術文化センターグラントワ|2005年

主要用途 劇場/美術館

設計 内藤廣建築設計事務所

建主 島根県

所在地 島根県益田市

学情

石見空港からバスですぐ。世界遺産の萩城下町も電車でおよそ1時間20分程度の距離です。

各施設の営業状況は公式HPよりご確認ください。